●荒川水系渓流保存会会報 第9号 編集責任 黒沢和義
経過報告と今後の方向 吉瀬 総 昨年の総会で、秩父イワナの保護区を設定するために取り組むことが、了承されました。 その後、この取り組みを具体化し、秩父在来イワナを森林生態系と、ともに保護する流域を、荒川の最源流に設定してもらうために、秩父漁協大滝支部や秩父漁協の意向をうかがってきました。 そして、昨年暮れ、釣り人の乱獲や非在来種の密放流から、在来イワナを守るには、禁漁区を設定して、在来種保護の意志表示をするしかないのではないかと考え、秩父イワナに関する研究の集大成を添えて、秩父漁協に、柳小屋以遠の入川本支流の禁漁を、要請しました。 このとき提出した秩父イワナ研究は、秩父イワナの歴史や形態的特徴、食性、生息域の水温統計など、たいへん貴重なデータばかりで、たいへんすぐれたものと考えています。 この要請については、今年度は、秩父漁協の受け入れるところとはなりませんでしたが、今後も、引き続きお願いし続けたいと思っています。 また、禁漁区域の設定などの詳細については、昨年の総会で決定したものではなかったので、漁協への要請は、「秩父イワナを守る会」の名前でおこないましたが、今年度の総会で、荒川水系渓流保存会の中に「イワナ調査・保護部」を設けて、保存会全体として取り組むことが、決まりました。 秩父在来イワナの保護区作りは、急がなくてはならなくなりそうです。 ここ数年、釣り人が増加し、イワナの型も数も、以前に比べると、ずいぶん小さく、少なくなってきたと思いますが、たいへんショックなのは、滝川の最源流に、明らかに在来種とは異なる、東北系のイワナが大量に生息しているという事実でした。 たとえ発眼卵だとしても、そうかんたんに放流ができるところとは思えないところに、これだけの数の非在来イワナがいるということは、かなり大がかりな密放流がなされている可能性を疑わざるを得ません。深刻なのは、一度非在来種が放流されてしまったら、在来種と交雑してしまうので、取り返しがつかなくなってしまうということです。 秩父イワナは、危機的状況にあると思います。 われわれも、漁協も、秩父在来イワナを何とかして守ろうとしているんだということを、すべての釣り人に理解してもらわなくてはいけません。そのための最大のアピールが、禁漁設定だと、私は思います。 数年来撮りためた、在来種の斑紋写真も、200匹ぶん近くになりました。 昨年お願いしていた、秩父イワナのDNA鑑定も、やがて結果が出ることと思います。 これらの資料を持って、再び、漁協に要請してみたいと思っています。 わたしを含め、われわれの多くは、釣り人です。 釣り人が禁漁を求めるというのは、自己矛盾のようにも思えます。 しかし、大好きな秩父の渓で、いつまでも秩父イワナが釣れるようにするには、これがいちばんいいと思います。 ほんとうは、われわれがいちばん欲ばりな釣り人なのかも、しれません。
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