●荒川水系渓流保存会会報 第2号 編集責任 黒沢和義 山の飼育池より 新井教夫 成魚池では、現在ヤマメの親魚が約500匹、今秋の採卵に向け飼育中です。先月(8月16日)からオスの成長を遅らせるために、オス、メスの選別をおこない、オスに蛍光灯を当てる作業を終了し、メスの成長を待っているところです。 稚魚池では、現在、昨年の秋に採卵し4月に放流したヤマメの残り約700匹と、前回の会報でも紹介したイワナ約500匹とが親魚を目指して成長中です。 イワナ成長記 メモ 今、飼育しているのはニッコウイワナ(秩父岩魚)です。このイワナの飼育に関しては孵化以後が大変難しく、餌付いて以後も夏を迎えるまでの間が重要と水産試験場で話を聞いていました。飼育開始時から2日に一回の観察を行っていましたが、5日目ごろから魚体が弱まり、水産試験場に連絡して聞いたところエラ病ではないかという事になりました。 魚体を5槽の池に分け、全滅を避けた訳ですが、この間は1日おきに池に行き魚体と池の消毒をくり返しました。水産試験場では「薬を・・」とも言ってくれたのですが、皆さんもご存じの通り、他の下流には水源もあるため「薬」を使わず、魚体は食塩水で時間をかけて洗い、池はアルコールで消毒し、元気な魚を分散させました。 弱った魚を放流して、現在の約500匹を残すことが精一杯でした。出来るだけの事をした結果とご理解下さい。また、水産試験場の主任研究員の大友さんには、飼育池まで来て頂いてご指導いただいた事をお礼申し上げますとともに、皆さんにその事をお伝え致します。 また、稚魚池で泳ぎ回るイワナを見て下さい。夏を過ぎ、池にも慣れ、おそらく親魚になるイワナの第一号だと思います。しかし、見て欲しいのは魚体です。ニッコウイワナ特有の頭から背中にかけての模様はありますが、朱点が無いかも知れません。それは、大友さんに聞いたところ、飼育している魚の魚体は与える餌に含まれる色素の「有・無」「多・少」に影響して栄点が出にくいとの事でした。 今、池へは各週が班ごとに分けられ、月の第一週から四週まで各班の代表者と会員が担当している訳です。私は第一週を担当しているのですが、私の班にはイワナの飼育以来、藤尾さんご夫妻が稚魚が心配でと、担当日には東京から駆けつけてくれます。また、来られない時は「東京で魚の事を心配しても‥‥」と電話が入ります。 他の班の出席率もあまり良くないようで、代表者に負担がかかっているようです。是非、皆さんの出席をお願いします。みんなの魚です、よろしくお願いします。 渓流のゴミ 秩父の渓流は日本一綺麗な渓流だと思う。深いV字谷を覆う緑のトンネル。太い幹を持つブナやサワグルミ、ケヤキの巨木が生い茂り、緑のドームを作っている。その奥から白く湧き出す清冽な流れは、あくまで透明で冷たい原始の水。苔むした岩を巻き、小滝をかけ大淵に渦巻く。そこに生きている岩魚とヤマメ。秩父の渓流は本当にきれいだと思う。 我々の大好きな秩父の渓流だが、昨今の釣り人にはその綺麗さが伝わらないのか? なぜだろうか?ゴミを捨てる人がいるのだ。信じられない事だが、この綺麗な渓流にゴミを捨てる人がいるのだ。 人工物があるだけで渓流の美観は損なわれると思う。ましてや、それが空き缶だったり、釣り餌のパックだったりすると悲しくなってしまう。釣りをする人間にとってその場所は神聖な場所のはずなのに、平気でゴミを捨てる釣り人がいるのは何とも情けない事だ。 当保存会の会員の藤木さん、吉瀬さん、澤村さん達は岩魚を釣る為によく源流に行く。会の方針で秩父岩魚の写真を撮影する為だ。この3人のザックは行くときよりも帰る時の方が大きくなっている。ゴミを拾って持ち帰って来るためだ。お酒のビンや缶ビールの空き缶などを見ると無性に腹が立つと言う。他の会員の方でもゴミを拾ってくる人がいると聞いている。本当に頭の下がる思いだ。 秩父の渓流に限らずどこでもそうなのだが、渓流のゴミはほとんどが釣り人のゴミのようだ。山登りをやる人、沢登りをやる人達の方がマナーが良いと言われている事も確かだが、釣り人だってそのくらいのマナーはある。心ない人がちょっと多いだけなのだ。渓流を大好きな人間として悔しいではないか。ゴミは絶対に捨てないようにしよう。 秩父の渓流を日本一綺麗な渓流にしたいのだ。 黒沢和義 秩父イワナへのこだわり 吉瀬 総 秩父のイワナは、いわゆるニッコウイワナです。 しかし、秩父イワナは、他の川のニッコウイワナとはひと目で区別できるほど、特徴的です。 小さな白い斑点と濃いオレンジの斑点。ヒレと腹は染めたようなオレンジ色です。 このように美しいイワナを育てる秩父の森、秩父の渓は、すばらしい。 広葉樹と針葉樹が織りなす、複雑で、重厚な植生。 黒く、峻険な岩場にびっしりと付いた厚い苔。 轟音を立てて流れ落ちる豪快な滝。 われわれは、秩父の歴史や風土の中で暮らしています。 秩父イワナもまた、われわれの暮らしの一部です。 秩父のイワナにこだわるのは、この山村に生きる、私らの生き方へのこだわりです。 都会暮らしとは異なる不便さがあっても、この斜面にりっぱな人生を築いているのだという誇りを、私らは持っています。 と同時に、われわれの渓に、浮き立つようなオレンジ色の斑点を持つイワナが泳いでいることにも、誇りを持っています。 ある県では、乱獲と乱放流によって、大古から生息していたイワナが絶滅したとも聞きます。 「おら方のイワナはこんなのだ」と言えないのは、寂しいことですね。 今年は、秩父の四大支流のうち、いくつかの沢で、イワナの写真を撮影してきました。 撮影にあたっては、黒沢和義さんからお借りした携帯水槽が威力を発揮しました。 今年の禁漁も目前に迫りました。 来年までには、秩父のすべての本支流のイワナを撮影したいと思っています。
皆さん、10月は採卵の月です。班分けになっている山の作業ですが、以下の予定は全員参加になります。一人でも多くのご協力をお願いいたします。 9月27日(日) 採卵作業準備 10月4日(日)・11日(日)・18日(日)・25日(日) 11月1日(日)予備日
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