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 荒川水系渓流保存会 会報 第8号 (2001年)
●育ってくれ! ●秩父イワナの形態調査 ●入川源流の禁漁
●荒川水系渓流保存会会報 第8号  編集責任 黒沢和義

育ってくれ! イワナ
                                               須崎 武男

 今期の大きな目標は、(1)イワナの棲息調査、(2)イワナの採卵、飼育でした。会員のみなさまのご協力により、この2目標ともに成果を上げることができました。
 みなさまのご協力に感謝いたします。イワナの生息調査についての詳細は、総会で報告することとなります。ここでは、ヤマメ・イワナの採卵について報告します。

●ヤマメ・イワナの採卵について

8月    例年行っている雌雄分け・雄への照射をせず、飼育しました。
      水量も多く病気になる魚もでませんでした。

10月8日 ヤマメ採卵−まだ時期が早く数匹から採卵する。

10月15日 ヤマメ採卵−腹をさいて採卵する。1万粒程度採卵する。

10月22日 ヤマメ採卵−腹を押して採卵する。3万粒程度採卵する。
       イワナ採卵−数匹より採卵する。

10月29日 ヤマメ採卵−腹を押して採卵する。3万粒程度採卵する。
       イワナ採卵−2万粒程度採卵する。

11月5日 ヤマメ採卵−捕り残しを採卵する。1万粒程度採卵する。
      イワナ採卵−2万粒程度採卵する。
 今期の採卵によりヤマメはおよそ10万粒、イワナはおよそ5万粒の採卵をすることができました。イワナの採卵では、昨年採卵時期を見過ごしてしまいましたので、水産試験場にもご指導していただき慎重に取り組みました。『イワナは筋肉が硬くなり、麻酔をかけないと産卵期がよくわからない』ということでした。イワナに婚姻色が現れ始めたらよく調べなければならないと思いました。今期はヤマメの最終とイワナの初回採卵が同じ日となりました。そして、ほぼ2週の採卵で終了することができました。麻酔をかけても40センチを越えるイワナを脇に押さえ採卵することは醍醐味さえありました。1度参加してみてください。

 現在(12月17日)、ヤマメ8万匹、イワナ1万粒程度(一部ふ化)生存しています。イワナは水温がなかなか下がらなかったために生存率が下がってしまいました。イワナの稚魚は思ったより小さくいものでした。
まだ、今後も病気等の心配もあります。
 元気に育ってくれることを願っています。

イワナの産卵床を作り、そこに
つがいのイワナを放流する。

10月22日のヤマメ採卵に
集まった会員の皆さん。

秩父イワナの形態調査
                                                    横手 利明

 減少が危惧される秩父イワナの保護に向け、関連組織への働きかけに必要なデータ収集として、8月と9月の休日に秩父イワナの形態調査を行いました。

 健脚組は入川の源流部で3日間キャンプをし、多くのデータを集めたそうですが、脚に自信がない小生は新井副会長殿に同行し、中津川と大血川の比較的入渓しやすい沢を対象に「沢の数」(全8ヶ所)で勝負しました。入渓しやすい沢だけあって小型が中心でしたが、10cm以下から尺近くまで幅広い層のイワナが確認できました。小型が多いのは将来に繋がる夢がもてるので安心できることだと思います。魚体の大小を問わず携帯型水槽に入れ、沢と斑紋の関係を調査するための写真撮影をしてリリースしました。

 エサは、新井さんはミミズと秩父の川虫をメインに使い、小生(飯能市在住)は入間市を流れる入間川から採取した小さな川虫(マダラカゲロウ?)を使いました。渓流釣りではハリスを細くし、針も目立たないようにエサを付けるのが常識ですが、十数年ぶりにエサ釣りに挑戦した小生は、せっかく釣れた魚を逃がしてはもったいないと、太いハリスと大きな針で挑みました。ところが、その大きな針に申し訳程度に付いた小さな川虫が、水の澄んだ日に効果があり、新井さんが「針しか見えないのにどうして釣れるんだ?」と不思議がったほどです。暖かい水域で生息していた川虫なので、夏の日中でも弱ることなく秩父イワナを誘い出してくれました。濁りの入った日は、やはりミミズに軍配が上がります。特に山の落ち葉の中に住むミミズ(新井さん曰く「跳ねミミズ」)は体に張りと艶があり、元気に動くので効果がありました。

 調査の最後になって二人に尺ヤマメが釣れました。小生は初めての「尺」でした。秩父の川が2ヶ月間調査したご褒美に与えてくれた魚かもしれません。
 来春も今回入れなかった沢を中心に調査する予定です。調査に貢献できて、好きな釣りができ、適度な運動になる。3拍子揃っています。皆さんも協力して頂けませんか?

形態調査の為に釣ったイワナを携帯水槽に
入れて撮影する新井副会長

尺ヤマメは川からのご褒美
だったのかもしれません


入川源流の禁漁を申し入れました
                                                    吉瀬 総

 昨年の総会で、秩父在来イワナの保護のための取り組みを行うことが決まりましたが、その後、具体的な動きがありました。

 ひとつは、秩父在来イワナとは、どういうイワナなのか、わかる範囲で、はっきりさせること。
形態的特徴については、この間の釣査によって、ほぼ明らかになったと思います。
またそれが、遺伝子的なレベルで、どのような特徴を持っているか、ということも、調べ始めました。(現在解析中)秩父在来イワナが、どのようにして奥秩父の渓流に生息するようになったかについての生態史的背景も、ある程度の仮説が出されました。

 次の問題は、秩父在来イワナを守るとは、具体的にどういうことをすることなのかということ。
われわれが、池で在来イワナを飼育していれば、在来種の血統は守られるかもしれませんが、それでは、渓流を守ることにはなりません。
 いちばん肝心なのは、自然な状態でイワナが繁殖できる環境を、いかにして守るかということです。

 在来イワナが、いまのような形になってきたのは、約1万年ほどのあいだ、秩父の山に育った昆虫類を食って生きてきたからです。
秩父の山には、秩父独特の森林があり、イワナのエサである昆虫類を育てています。
となると、イワナの生息環境を守るとは、イワナの生息する森林生態系を守るということでなければ、ならないはずです。

 在来イワナの脅威は、まずは工事などによる環境破壊、次に釣り人の釣獲圧、そして密放流でしょう。
環境破壊から守られており、密放流者の魔の手から現在なお、守られていると言えるのは、秩父では入川だけです。
入川源流は、林野庁によって「秩父山地 森林生物遺伝資源保存林」に指定されており、奥秩父らしい森林生態系が、よく保全されています。
 森と共に、在来イワナを守るなら、ここしかありません。

 そういうわけで、本会の有志で「秩父イワナを守る会」をつくり、在来イワナに関する、このかんの研究成果と共に、秩父漁協に対し、入川源流・柳小屋(松葉沢以遠)の禁漁設定を、申し入れました。

 まだ、回答はいただいていません。
今後、理事会等を経て、最終的には総代会で、申し入れの可否が決定されるものと思います。

 いずれにしても、在来イワナの保護の第一歩が踏み出せて、ほっとしていると共に、引き続き、今後もしっかりやっていかなければならないと考えています。

*漁協への申入書のコピーがあります。必要な方は、吉瀬(0494-25-0861)まで、お申し付け下さい。

山では秩父イワナの稚魚が育っています。これは秩父では初めての画期的な出来事です。この稚魚が右のような尺イワナに育つのです。


 CD−ROM 秩父イワナ図鑑
 最新版Version0.25が完成しました。
会員の吉瀬さんの力作CD-ROMが出来上がりました。
ご希望の方は吉瀬さんまでお問い合わせ下さい。
総会 場所 福祉婦人会館
日時 平成13年2用11日 午後1時より

●万障お繰り合わせのうえご参集下さい。
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